クリヴォフ夫人の屍体が
その時、クリヴォフ夫人の屍体が運び出され、それと入れ代って、一人の私服が入って来た。勿論全館にわたる捜査が終ったのであったが、そのもたらせられた報告には、思わず驚きの眼を※るものがあった。と云うのは、殯室の鍵は勿論のことで、それにあろうことかレヴェズの姿が、曲目の第一を終って休憩に入ると、同時に消えてしまったというのだった。なおそれに伴って、ちょうど惨事が発生した時刻には、真斎は病臥中、鎮子は図書室の中で、著作の稿を続けていたということも判った。しかし、それを聴くと、法水の顔にはただならぬ暗影が漂いはじめた。彼はもはや凝然としていられなくなったように、焦かしげな足取りで室内を歩きはじめたが、突然立ち止って、数秒間突っ立ったままで考えはじめた。そのうち、彼の眼に異常な光芒が現われたかと思うと、ポンと床を蹴って、その高い反響の中から、挙げた歓声があった。Photographs depicting the future storage